AIツールを増やす前に「消すべきタスク」を見つける1週間ログ術
新しいAIツールを導入すれば生産性が上がる——そう思って次々とツールを増やしていないだろうか。実は、ツールを増やす前にやるべきことがある。今やっている作業の中から「消せるもの」を特定することだ。
最適化より先に削る。これが効率化の鉄則だ。存在しないタスクを効率化する必要はないからだ。
この記事では、1週間の行動ログを取って「消すべきタスク」を洗い出す具体的な方法を紹介する。使うツールはRescueTimeかToggl Track。どちらも無料プランで十分だ。
なぜ「増やす」より「消す」が先なのか
RescueTimeの公式ヘルプには興味深い記述がある。生産性スコア(Productivity Pulse)を改善するには、Focus Workの時間を増やすより、Distracting(気が散る活動)の比率を下げる方が効果的だという考え方だ。
これはツール導入にも当てはまる。新しいAIツールで作業を効率化しても、その作業自体が不要だったら意味がない。まずは「何に時間を使っているか」を可視化し、削れるものを削る。その上で残ったタスクを効率化する順番が正しい。
1週間ログの取り方:2つの選択肢
選択肢1:RescueTime(自動計測派向け)
RescueTimeはPCやスマホにインストールするだけで、どのアプリやサイトにどれだけ時間を使ったか自動で記録してくれる。手動で記録する手間がゼロなのが最大のメリットだ。
記録された活動は自動的に5段階(Distracting / Personal / Neutral / Other Work / Focus Work)に分類され、0〜100のProductivity Pulseとして数値化される。
注意点がある。 未分類(uncategorized)の活動が多いと、スコアが50付近に寄りやすい。正確な分析をしたいなら、最初の1〜2日で主要な活動の分類を手動で調整しておくといい。
また、仕事用PCだけで計測するか、私用端末も含めるかでスコアは大きく変わる。比較するなら自分の過去平均との差分で見るのが現実的だ。他人のスコアと比べても意味がない。
選択肢2:Toggl Track(手動記録派向け)
Toggl Trackは作業を始めるときにタイマーをスタートし、終わったら止める手動記録型のツールだ。面倒に感じるかもしれないが、「今から何をするか」を意識するので、ダラダラ作業を防ぐ副次効果がある。
記録を続けて数日経つと、Summary Reportで「この週、何に何時間使ったか」を俯瞰できるようになる。
落とし穴がひとつ。 Summary Reportは日付範囲を指定しないと表示されないことがある。レポート画面を開いたら、まずDate Pickerで「過去7日間」などの期間を設定する癖をつけておこう。
どちらを選ぶかは好みだが、「記録を忘れそう」ならRescueTime、「細かくカテゴリ分けしたい」ならToggl Trackが向いている。
1週間ログの実践手順
Day 1-5:ひたすら記録する
最初の5日間は、とにかく普段通りに仕事をしながら記録を取る。行動を変えようとしなくていい。「今週は意識して集中しよう」なんて思わなくていい。いつも通りの自分を記録することが目的だ。
RescueTimeなら特に何もしなくていい。Toggl Trackを使う場合は、作業を切り替えるたびにタイマーを切り替える。
記録する際のコツとして、対象時間帯を固定することをおすすめする。たとえば「平日9時〜18時」だけを分析対象にする。プライベートの時間まで含めると、仕事の改善点が見えにくくなる。
Day 6-7:棚卸しと分類
週末(または週の終わり)に、記録を振り返る時間を30分〜1時間確保する。
Toggl Trackなら、Summary ReportをPDFかCSVでエクスポートしておくと、後から見返しやすい。エクスポートしたデータを眺めながら、以下の5つの観点で分類していく。
分類の観点:
- やめる:そもそも不要だったタスク
- 減らす:必要だが時間をかけすぎているタスク
- 委譲する:自分でなくてもいいタスク
- 自動化する:手作業でやっているが自動化できそうなタスク
- 増やす:もっと時間を割くべきだったタスク
この5つのうち、最初の4つが「消す候補」だ。特に「やめる」と「減らす」は、ツールを導入しなくても今すぐ効果が出る。
よくある「消せるタスク」のパターン
1週間ログを取ると、だいたい以下のようなパターンが見つかる。
会議・MTGの過多 「週に10時間以上会議に使っている」と気づいて驚く人は多い。本当に出席が必要な会議か、議事録を読むだけで済まないか、見直す余地がある。
調べ物の深追い エンジニアにありがちなのが、必要以上に技術調査に時間を使ってしまうパターン。15分調べて分からなかったら人に聞く、といったルールを設けるだけで改善することがある。
割り込み対応 Slackやメールの通知にその都度反応していると、細切れの時間が積み重なる。通知を見る時間帯を決めるだけで、集中時間を確保できる。
作業の重複 同じような作業を何度もやっていないか。ログを見返すと「これ先週もやったな」という作業が見つかることがある。テンプレート化や自動化の候補だ。
数値目標は立てなくていい
RescueTimeのProductivity Pulseについて、公式は**「100%生産的を目指すべきではない」**と明言している。常に高いスコアを維持するのは不健康だし、現実的でもないという立場だ。
数値を追いかけすぎると、スコアを上げることが目的になってしまう。大事なのは、自分の行動パターンを可視化して「消せるもの」を見つけることであって、スコアを上げることではない。
GTDの週次レビューも同様の思想で、**「システムを信頼できる状態に戻す」**ことが目的だと説明されている。未処理・放置・重複を減らし、頭の中をクリアにする。その結果として効率が上がる。
この方法が向かない人
正直に言うと、この1週間ログ術は万人向けではない。
すでに業務が最適化されている人には、あまり発見がないかもしれない。ログを取っても「特に削れるものがない」という結果になる可能性がある。
記録を続けるのが苦痛な人も向いていない。特にToggl Trackの手動記録は、習慣化できないと1週間持たない。その場合はRescueTimeの自動計測に切り替えるか、いっそログを取らずに直感で「明らかに無駄な作業」を1つ減らすところから始めてもいい。
まとめ:ツールは「消した後」に増やす
AIツールは確かに便利だ。でも、不要な作業を効率化しても意味がない。
1週間ログを取って「消すべきタスク」を特定する。それを削った上で、残ったタスクにAIツールを導入する。この順番を守るだけで、ツール導入の効果は何倍にもなる。
まずは来週、RescueTimeかToggl Trackで1週間の行動を記録してみてほしい。思っていた以上に「消せるもの」が見つかるはずだ。